器を先につくる — 成果の前に、成果が生まれる場所を整える

Blog
ホワイトボードの前で説明するビジネスマンとチーム
2026.08.19
仕組み, トピックス
代表取締役社長 中根 茂雄

第25期が始まって、ひと月が経ちました。

このひと月、私が何をしてきたかを正直に言えば、成果の出ない仕事です。会議の組み替え。管理表の整理。文書の一本化。売上になるわけでも、お客様に届くわけでもありません。

けれども、ここを飛ばすと、今期がずっと重くなります。今日はその「器づくり」の話を書いてみたいと思います。

会議を直したければ、会議に手をつけない

会議室で資料を囲んで打ち合わせるチーム

今週から、各部の週例会議を1時間後ろにずらしました。そしてある日、その4本を続けて行いました。

会議のなかで話していたのは、じつは会議のことではありません。各部の運営の手引き、期初に出した戦略書、これまで積み上がってきた検討事項。この三つの文書がそれぞれ別の場所にあって、同じことを違う言葉で書いていたり、片方にしか載っていなかったりする。これを一本にまとめる作業を、ひたすらやっていました。

会議は、前段の写し鏡

なぜそれを先にやるのか。会議の設計から入ると、必ず手が止まるからです。「この会は誰が出るんだっけ」「今日は何を決める会だっけ」。毎回それを考えることになります。逆に、各部が今期やるべきことの一覧さえ固まっていれば、「今日はこれを協議するタイミングですね」で会議は始まります。会議は、その前段にあるものの写し鏡なのだと思います。

8時間の会議が、正午に終わった理由

これは、以前に読んだある経営コラムの指摘とも重なります。人が育つ会社では、管理者から若手まで全員が何かしら「考えるテーマ」を持っていて、それについての行動を求められている。そういう状態でない会社の会議は、報告と反省だけで終わり、いつまでも長くなる、と。そのコラムには、こんな例がありました。ある会社では、報告書の書式に「対策」と「具体的な行動スケジュール」の欄を足しただけで、8時間かかっていた月例会議が正午には終わるようになったそうです。書式を変えたから短くなったのではなくて、店長が考えるようになったから短くなったのだと思います。

つまり、会議を直したければ、会議に手をつけてはいけない、ということになります。

私たちがいまやっているのは、まさにその前段です。年間計画の粒度をそろえ、担当を割り当て、去年のリストと今年の戦略を突き合わせる。地味で、時間もかかります。今日の会議でも「このボリュームは大きい」という話が出ました。二つの事業部が統合した部署では、なおさらです。ただ、ここを飛ばして会議の設計から入ると、来週また同じ場所で止まります(時には、回り道が近道の場合もあります)。

一覧に書きすぎない

モニターの管理表を確認するビジネスマン

同じ構図が、管理表にもありました。

同じ週、社内の管理表について話し合う会議がいくつか続きました。分野はまったく違うのですが、結論として同じ判断を3回することになりました。「一覧に書きすぎない」ということです。

ひとつは、保守案件の運用管理一覧でした。長く使ってきた表なのですが、部署の統合にともなって整理が必要になりました。眺めてみると、業務内容、お客様の窓口、連絡手段、担当者、備考と、ずいぶん多くの列が並んでいます。どれも必要な情報です。ただ、必要だから一覧に載せるべきか、というと、そうではないと思いました。

一覧の目的は、俯瞰と絞り込み

一覧は何のためにあるのか。私は、俯瞰することと、たくさんある中から条件で絞り込むことだと考えています。あるサービスを使っているのはどこか。あのサーバーに載っているのはどれか。そういう時に、一覧は力を発揮します。逆に、「このお客様の窓口は誰だったか」を一覧から探すことは、まずありません。それは案件ごとの詳細ページを見に行く場面です。

そう考えると、一覧に列を増やす判断は、目的から外れていきます。しかも詳細ページ側にも同じ情報がある。同じ情報を二か所に持つと、担当が変わったときに片方だけが更新されて、もう片方が静かに古くなります。二重管理は、手間が2倍になるという以上に、どちらが正しいのか分からなくなることが問題なのだと思います。

二つの工程表を、一本にする

もうひとつは、あるプロジェクトの工程表でした。担当者が二人いて、それぞれに作った工程表が二つ存在していました。片方は人が編集しやすい表計算、もう片方はAIが生成したもの。どちらにも良さがあります。ただ、二つを整合させ続ける作業には、何の価値もありません。ですから、まず「一本にする」ことだけを先に決めて、それからどちらにするかを議論しました。決め方としては、実際に手を動かす担当者がやりやすい方を選びました。管理する側の都合ではなく、作る側の都合で選ぶ。これは、続くかどうかを分ける差だと思っています。

こう書くと当たり前のことのようですが、実際の現場では、列は増える方向にしか動きません。「あった方がいい」は、いつでも正しく聞こえるからです。減らす判断だけが、意識してやらないとできません。

文字にして、はじめて決まる

議事録の書類とキーボード

そして、この週の反省をひとつ。

3回とも、話し合った場では結論が出ました。しかし、それを文字にしたのはこれからです。文字になっていない決定は、決まっていないのと同じです。次の担当者は、なぜこの列がないのかを知りませんから、良かれと思ってまた足すでしょう。列を減らすことより、「なぜ減らしたか」を残すことの方が、おそらく難しいのです。

別の会議では、こんな課題も出ました。

ドキュメントが散らばっていて、どれが正なのか分からない

前回のコピーがあり、新しく作ったものがあり、統合したはずのものがまた分かれている。これも根っこは同じで、置き場が決まっていないから探すことになり、探すことに時間を使うのです。

器がよければ、中身は自然に育つ

明るいオフィスでパソコンに向かうビジネスマン

ひと月の整備を並べてみると、やってきたことは三つだけでした。

前段を固める。一本にする。文字にする。

どれも成果そのものではなく、成果を生むための器です。器づくりは地味で、誰にも褒められません。けれども、器の無いところで頑張ると、その頑張りは人に付きます。そして人に付いたものは、人と一緒に出ていってしまいます。

急がずに、しかし止めずに、進めてまいりたいと思います。

皆さんの会社にも、直したいのに直らない会議や管理表はありませんか。もしあれば、一度、それ自体ではなく、その前段を見てみてください。案外、直すべきものは別の場所にあるのだと思います。

まとめ

  • 会議は、前段の写し鏡
  • 一覧の目的は、俯瞰と絞り込み
  • 正本は、一本にする
  • 文字にして、はじめて決まる

あわせて読む